久しぶりです。いつか久しぶりでなくコンスタントにブログを書く日が来るのでしょうか。そんな日が来るかはわかりませんが、今回は大変素晴らしい映画を見てきたのでその感想文を書きます。

見てきた映画はこちら『スポットライト 世紀のスクープ』です。よくは知りませんがアカデミー賞の作品賞と脚本賞を取ったものらしいです。 見に行く前はアカデミー賞ってそんなすごいの? というぐらいの気持ちしか持っていませんでしたが、見終わった今は、そんなすごいね! という感じでした。

 あらすじはと言いますと、ボストン・グローブというある地方紙にバロンという名前も見た目もかっこいい局長がやってきて、四人しかいないスポットライトチームにこの事件もっと追ってみない? と指示を出したら、なんかものすごく広がりまくったという感じです。

その事件はカトリック教会の神父による児童性的虐待事件でした。最初はひとりのいかれた神父がやらかしたぐらいな感じでしたが、調べれば調べるほどいけない神父さんがでてきて、それなのに事件としての情報が少なく、これは教会ぐるみで隠蔽してるのではとまでなりました。

この話は事実とのことです。事件はいろいろな年に起こっていますが、舞台となっているのは911のテロが起きた年の前後で、劇中でもテロが起きたのでいったんこちらの事件の調査が遅れたり、教会は必要なのではみたいなシーンが出てきます。

映画としてはそんな事件の情報を集めて記事にしてすぐのところでおしまいです。なので過激なアクションも衝撃的な犯人も感動の結末もありません。家族のために命をかけて戦いに行ったりもしません。情報を集めて記事を出して終わりです。なのに、おもしろいのだから、この映画は素晴らしい、と言えるでしょう。

この映画にはふたつの空気があります。町と宗教です。どちらも合わさっているので切り分けるのはむずかしいのですが、主人公たちも教会も出てくる人の多くがボストンという町という空気の中で生きています。それはあるときには町のためという良い言葉のようにもなりますし、逆に町のために人が押しつぶされるというような空気ですらあります。

そしてそんな町に密接に関わっているのが宗教です。ボストン・グローブにやってきた新局長はカトリックの枢機卿に挨拶しにいくのが慣例となっているというのですから、どれぐらい宗教が日常になっている町かということがわかるでしょう。そんな枢機卿とバロン局長のやりとりもおもしろかったです。正確には覚えていませんが、

枢機卿「教会と新聞一緒に町を盛り上げていきましょう」
バロン局長「ありがとうございます。でも、新聞は独立することが大事だと思いますので」

さすがですね。バロン局長かっこいいですね。こんなバロン局長に対して「あいつはユダヤ人」、「どうせこの町をすぐにでていくぞ」というような町の人の声もあるので、より町という空気が鮮明になります。そのほかにも虐待を受けた側の人を守ろうとする弁護士さんがボストン育ちだけど血筋はポルトガル人の主人公記者に対して「我々はよそものだ。町の人間は我々を住みにくいようにする。だがよそものだからできることがある」(記憶曖昧)的なことも言っていて、なんとも言えない気持ちになりました。

弁護士といえば、ほかにも虐待をした神父側を守る弁護士もでてきます。その弁護士は主人公記者チームのデスクの友人です。なにが正義なのか、という話になりますが、その弁護士が言った「弁護士は悪党を守るのが仕事なんだ」というようなセリフはとても正しいものだと思いますし、新聞社の中でも「悪党を守るクソ弁護士」、「いや、弁護士はそれが仕事だ」と意見が分かれ一概に否定しないところはさすがだな、と感じました。

見ていて、新聞記者の仕事はとても大変だな、と感じました。ほんとうに正しければ記事にするというのはいいですが、それが正しいのかどうかの判断を神様に頼るわけにはいきません。感情的に攻撃するだけなのか、ほんとうに必要な判断ができているのか、むずかしいことだと思います。映画の前半あたり、まだ情報があまりそろっていない段階でバロン局長が言いました。

「騒ぎにはなる。だが変えることはできない」

この視点をどれだけの人が持てているでしょうか。手段として変えるために騒ぎを起こすのだというのは、この映画の主人公たちもある意味では考えていることです。当然スクープを他紙よりさきがけて手に入れ、その記事による騒ぎを起こそうとしています。ただ、それだけではないのでしょう。残念ながら日ごろ見ている日本の記事や政治家、有識者の活動のある部分では、騒ぎを起こすことが目的になっているのではないかという部分も感じられます。すべての人がそうだとはもちろん言いませんが。

あと話は変わりますが日本での公開で英語のセリフと日本語の字幕があるからこそ発生したものだと思うのですが、登場人物たちが「システムを変えなければならない」とか言っているときに「教会を変えなければならない」という字幕がつくのがとてもいいです。「教会(システム)」というルビがつく感じです。これ、かっこいいな、と感じました。

この映画はどのぐらい予算がかかっているのでしょうか。たぶん、ものすごいCGとかが使われているわけではないでしょう。優秀な監督、脚本、演出、役者に全力でつっこんでるかもしれませんが、設備や道具の面ではさほど予算はかかっていないように思えます。予算がないから邦画はダメなんだ、味噌汁くばってるんだ的な話が少し前にありましたが、こういった映画を日本で作るのもむずかしいのでしょうか。優秀な人という才能がそもそもいないのかもしれません。少し前にみた『リップヴァンウィンクルの花嫁』は邦画でもとてもよかったので一概に邦画がダメということでもないとは思いますが。

そのほかにもいろいろいろいろ語りたいことはあるのですが、全部書くわけにはいかないのでぜひ映画を見に行きましょう。性的虐待についての話ということでつらいシーンもあるのではないかと心配される人もいるかもしれませんが、そういった直接的なシーンはありません。基本的に記者の視点なので、記者が見たもの以上はでてこないという形です。もちろん、そこから想像してしまうことはできますし、そういった構造にはなっていると思います。

こう、~だからすごいんだ、的なことが言えず、そういった目立つあらすじやアピールポイントがないのに、すごいと感じるからこそ、もっとすごい映画なんだという感じに思う映画です。演技はどの人も素晴らしいです。みんなかっこいいです。考えることもいっぱいありますので、ぜひ見に行きましょう。

欲を言えば、記事が出たあとどうなったのか、というのももっと見てみたいなーと思いますが、それは事実を調べればいいのかもしれません。そんな風に思う映画でもありますので、やっぱりぜひ見に行きましょう。

ではでは。