みなさん、天才探偵と天才犯罪者が知的な戦いを行う小説を書きたいですよね。書きたくない人は回れ右して帰ってください。わたしは書きたいのです! なので今回はそれを書く上での問題についてつらつら考えたことを書いてみたいと思います。なお、答えは明確に定まっていませんのでそれを知りたいというだけの人のGHQ(Go home quickly)してください。というわけで行ってみましょう。


みなさんもお分かりのことと思いますが、天才対天才を書く上での一番の問題点は、犯人がバレるということですね。もうひとつ「作者は作者の能力を超える天才を書けない」的な意見もたまに聞きますが、これはそうではありません。わたしの大好きな森先生もどこかで書かれていましたが、作者には時間という有利な条件がありますので、作者がじっと長い時間を書けて考えたものを作中の天才キャラにしゃべらせればそれだけで作者より頭のいいキャラになるでしょう。この意見を支持する人は長い時間をかけて考えるというものの存在を知らないか、もしくは理屈を少し間違って考えてしまっているのだと思います。内容を直せば「頭のいい作者は、頭の悪い作者よりも、天才を書きやすい」ということになるのではないでしょうか。超えられるかどうかが問題ではなく、より容易いかどうかの問題になっているのだと思います。

閑話休題。 というわけで天才は書けなくはなさそうだという条件の元に、ひとつめの問題である「犯人がバレる」問題への対処を考えるため、現在、どのような方法があるかなどをあげつらねてみましょう。

1.  普通パターン

まずは何も特別に隠さないパターンです。容疑者が数人いて、その中に世間的に既知の天才がいます。そうなればやっぱりこいつが犯人だろう、と読者は期待するでしょうし、犯人じゃなかった場合、こいつなんだったのだ、となるのでもう少し工夫がほしいパターンです。

2. 身内パターン

前に書いたことがあります。探偵役やその身内、警察などに犯人がいるパターンで、天才対天才の探偵と犯人という役割を見た目上入れ替えることで読者の錯誤を狙います。これは、バレバレだろう、わかってもいいや、と思いながら書いたところ、わりとバレてなく騙される人も多かったので、あまり何度も使えませんが、有効な手であるかもしれません。読者は宣言された役割を無条件に受け入れるのかもしれません。それだけに、微妙にアンフェアで、ずるい、と言われたりする覚悟は持って選びましょう。 

3. 黒幕パターン

実行犯が別にいて、天才犯罪者は計画を渡しただけというものです。天才も容疑者に含まれていたりしますが、実行は別の人なので、疑われつつも犯人ではない人として天才の頭脳を書けたりするでしょう。同じ天才犯罪者を何度も別の事件で登場させる場合は、このパターンが用いられることが多い印象ですが、やはり直接の犯人ではないという物足りなさがあり、天才が直接犯人の話が読みたくなります。

4. 途中で傷つきパターン

3件ぐらい事件が起きるときに2件目や3件目あたりで襲われるけど生き残るパターンです。別の動機を持った人からの犯行に巻き込まれたり、そもそも偽装だったりします。作中では、襲われたのだから犯人ではないのでは? という方向に持って行きやすいですが、読者からすると「おまえ、生き残ったからには犯人だろ。犯人じゃなかったら死ぬだろ。ここで生き残らせる意味ないだろ」的になるので、逆に疑惑を向けられたりするので、使い方が難しいパターンです。後続の2パターンに派生します。

5. 途中で死んだっぽいパターン

実は死んでません。4番目の派生パターンです。身代わりの死体の首から上をふっ飛ばしたりするなど身元の確認を不正確にし、死んだと思わせるパターンです。死体が出るので4.よりも信じやすく、最後の犯人登場で「おまえ、生きてたのか!」と驚かせる効果もあり素敵ですが、読者もよく訓練されていますので、首から上をふっ飛ばすと「お、死体いれかえだな」と予想されます。死の偽装方法に工夫が必要なパターンです。ここにいいアイデアが思い浮かべばかなりいいものになるでしょう。細かなマイナス点は死の偽装シーンから真相解明までの間のシーンでは死んだことになっている天才キャラを出せないということなどがあげられます。あまり序盤で退場は避けたいところです。

6. 途中で死ぬパターン

これも4番目のパターンの派生です。襲われたり、殺されたように偽装して自殺したりします。実際にそのキャラが死んでいるので、読者はもう信じるしかないでしょう。だいたいの流れとしては、ひとりめ殺す、ふたりめ天才殺されたとみせかけて自殺、さんにんめ自動トリックで殺す、という感じかなと思います。既にキャラが死んでいるのに、さらなる被害者がでることで、読者の疑惑を天才キャラから遠ざけます。これは一度書いたところ難点がわかりました。犯人指摘のところで既にその天才さんが死んでいるため、どうも盛り上がりに欠けます。なんとなく勝ち逃げにも見えるため、探偵側が勝った感もでません。わたしはわりと犯人勝ち逃げ好きなのですが、世に好まれる流れではないようにも思います。
 
7. 天才たくさんパターン

容疑者がみんな天才というパターンです。天才集団みたいなところで事件が起きるという想定でしょうか。みんな天才なのでみんな同じように読者から疑わられます。問題点は突出した人がいないとみんな凡人という場合の上位互換程度でしかないということです。悟空とベジータがはじめて地球で戦ったときは地球さん震えていましたが、その後、それよりはるかに強い神コロさまやスーパサイヤ人たちが普通に戦っていても地球さんは震えません。地球さんが震えるのはあるグループの中で突出した人が少数出現した場合です。同様に読んでいる人もみんなというよりも探偵対犯人という少数の優れた人のバトルに震えるのではないか、と思います。
 
8. 古畑パターン

倒叙と呼ばれるものです。刑事コロンボや古畑任三郎などがこれに当てはまります。犯人は初期から読者に明かされており、それをわかった上で犯人を探したり追い詰めていく探偵役とそこから逃れようとする犯人のバトルを楽しむパターンです。犯人を最初から明かしているのでバレる、という心配はいりません。もしかしたらこれがわたしの求めているパターンではないかとは思いつつ、このパターンは心理戦などの書き方で楽しませるという難しさがあるとも思うので今のところ挑戦はしていません。こういうのもあるということから、「まあ、バレちゃっても、2回目でもおもしろくなるようにしたいよね」ぐらいの気分で一応、隠して書くほうを選んでいます。

9. ゴーストライターパターン

Aさんという天才がいるとのことですが、実はそいつは凡人で、影でBさんという天才が作成したものによって、Aさんは世間で天才だと思われていたというパターンです。Bさんは一見凡人なので、読者の疑いの目は一見天才のAさんに向きますので、Bさんが動きやすくなります。問題点はBさんが天才ならなんで影にいるの、ということです。秀才レベルのようなちょっと優れた人という犯人ではこのパターンが採用されていることも多い印象ですが、やはり天才という凄さでは矛盾が感じられるような気がします。リアリティを少し落とすと、別人の凡才になりきるのを楽しんでる天才キャラなどで使われるようにも思います。

とりあえず自分で書いたり、読んだことあったりで思い浮かぶのはこんなところでしょうか。いろいろな工夫がありつつ、やはり無理したところにでてくる問題点もそれぞれにあるのかなと思います。

ナイスアイディア! レベルのもの思いついた場合は各自大事にして自信の小説で使ってください。そうではなく、これ、基本だろ、的なパターンがありましたら教えてもらえるとありがたいです。

やはり天才対天才を犯人隠して書くのはむずかしいです! こんなブログ書いたら「お前の天才、犯人だろ」と思われてしまいます。それでもわたしは天才を読むのも書くのも好きなのです! ですので、どうにかなにかないかなと考えてちょっとした派生パターンを思いついたので来年はそれを書きたいな、というところで今年のブログはおしまいです。あれ、来年に書く予定の話の犯人を書いてしまっているぞ……。

2015年を振り返る的なことをしますと「特になにもしてなかった」の一言で終わりです。

ではでは