ひさしぶりのブログです。感想文はものすごくおもしろいものを見つけたときに書くというルールですので、久しぶりになったのはわたしのせいではありません。毎月新刊を出さない森先生のせいです。というわけで今回は森先生の新刊である『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』の感想文です。行ってみましょう。
 



簡単に説明しますとこの本はSFです。すごく未来です。2世紀ぐらい後の世界が舞台になっています。 日本に何が起こったのかはわかりませんが首都はサッポロになったらしいです。たぶん、独立戦争をしかけたのでしょう(嘘)。

この本は百年シリーズと関連しているような感じです。英語タイトルにあります通り、ウォーカロンというあれがよくでてきます。百年シリーズよりもさらに進化しているようです。 そう、発展というより進化という言葉がふさわしくなっているようなそんな感じです。

今までのシリーズとの関連などもでてくる度に、ニヤニヤしてしまうわけですが、それは置いといてもこの本が楽しいのは森先生が書く遠い未来の話だからです。未来を描いたSFはたくさんあると思いますが、この本が特に好みだな、と思う点は現代からの地続き感です。なんと言えばいいでしょうか。たとえばガンダムは未来を描いたSF作品であるわけですが、あちらはまずガンダムという巨大ロボットが戦う話という作品に必要な大きな嘘を用意した上で、ではなぜ効率の悪い人型ロボットなのかという点などを別の嘘、ミノフスキー粒子の説明などで埋めているわけです。今作は逆であるように感じました。現代から時間を少しずつ未来へ進めていった場合に、その未来時点で起こりうる世界を考えて書かれているように感じるのです。もちろんガンダムがいけないというわけではありません。ガンダム作品もいろいろ好きです。作品の構成方法の違いだと思いますし、この作品でも世界を作るための嘘のようなものはやはり存在しています。ただ、それでもその今とつながっているよう感覚が、この作品のおもしろさであり、またこわさでもあるだと思いました。

そうこわいのです。この作品、こわいのです。夜に一人で読んでいたらうすらさむくなってくるのです。命が狙われているとかドローンが攻撃してくるとかそういった物語上の危険さもあるのですが、それは別にそんなに怖くはありません。この作品のこわさは青くて白いようなものです。静かで冷たいこわさです。戦争のような数年というある程度短い時間で壊れてしまう恐怖ではなく、もっと長いスパンの社会が発展していった際に、発生する変化のこわさが書かれています。そして、それは受け入れづらいという感覚はありつつも、そちらの方がより綺麗で純粋で整った未来ではないかというようなものなのです。

細かな点でもおもしろいのがさすがの森先生だなという作品でもあります。 この地続きのような未来で、今からすれば未来だけど、作中からすれば過去というような時代についてもところどころ説明があります。人間ははじめ、体の一部を機械に置き換えていき、それから人工細胞を使うようになったので、機械の体を持ていた際の「サイボーグ」という呼び方は作中では差別用語だそうです。おもしろくないですか? 今の時代からすれば、ちょっとした憧れすらあるようなものです。そんな言葉も遠い未来では差別用語になるかもしれない。そういった現代とはずれた感覚を楽しむことができます。なお、遠い未来の研究者も残念ながら不要な会議からは解放されていないとのことでした。きっと世界最大の敵は会議なのでしょう。

これを読む前に何か他の作品も読んだほうがいいか、と言われたら、S&MやGや四季とか百年シリーズと答えますが。別に読まなくてもいいんじゃないですか! とも思います。『赤目姫の潮解』が出た際にはそのわかりにくさというか幻想さというか不思議な感じから、これが百年シリーズの3作目なの? という悲鳴があがったりしたような気がしないでもないですが、あれよりはわかりやすいと思います。赤目姫も好きですが、一見のわかりやすさはこちらが上です。大丈夫です、こちらは普通の物語してます。

この作品はシリーズのようで、もう既に次作、次々作のタイトルが公開されています。近いうちに出るのかなーととても楽しみです。もっともっと未来の話が読みたいなーと思います。油断してると赤目姫のようなものが来そうな気もしますが……。

というわけで簡単にあーだこーだと感想文を書きました。とてもおすすめな作品です。ぜひ読んで、読んだ人それぞれの感想などをネットのどこかに置いてもらえれば、それを読んでまた楽しめるなーと思っています。

ところで青い or 緑の魔法はないのでしょうか?

ではでは